業績好調の一流大企業を自分から辞めたい人の心理

なぜ人もうらやむ一流企業を辞めたいのか

安定を求めて業績好調で将来性もありそうな一流大企業を目指して就職、転職活動を懸命にがんばっている人たちが数多くいるなかで、

その誰もがうらやむ一流大企業で働いている人がリストラ対象にされたわけでもないのに、辞めたいとおもっていたり、実際に辞めてしまうケースが数多くあります。

そういう人たちは、とくに入社して数年の若い世代に多いのです。

私がキャリアコンサルティングしたケースの中にも、そういう状況にいる、

つまり「だれもがうらやむ良い会社」で働いているにもかかわらず「辞めたい」と相談される人が相当数いるのです。

それでは、どんな理由で「辞めたい」とおもうのでしょうか。

もちろん、理由は様々ですが、一つの傾向として例をあげてみます。

希望と現実のギャップ

典型的な例としては、新卒で入社したけれども配属された部門が希望通りの部門ではないケースがあります。

例えば、新規事業の企画など会社の未来を創るような仕事をしたくて入社したのに、経理や人事などのいわゆる管理部門に配属されたというケースです。

Aさんは、一流大学を卒業して、それほど苦労せず数社から内定をもらい、その中から歴史のある財閥系の一流会社に入社しました。

入社前の面接でも、自分のしたい仕事の夢を語り、面接官との会話もはずみ、これはいけるだろうという感触をもっていました。

その会社で働く大学のゼミの先輩とも面接の前後で何度か会い、会社の実情、雰囲気、将来性などをよく聞いて、将来的にも有望であるという確信をもって最終的に数社の内定をもらった中から入社を決断しました。

にもかかわらず、自分が全く希望も予期もしていない本社の管理部門に配属されたのです。

全体研修、部門研修の中で、同期同士でいろいろと情報交換してみると、なかには自分の希望どおりの部門へ配属となった人も多くいるようでした。

Aさんのように希望していなかった部門に配属された人ももちろんいましたが、みなそれほど落ち込んだ様子もなく、希望に燃えているようでした。

実際に配属された部門での仕事は、最初こそなんとなくアウェイ感を感じていたものの、やりはじめてみると人間関係も良い部門で、上司にもめぐまれ順調に進んでいきました。

退屈そうな部門を想像していましたが、管理部門とはいえチャレンジンッグなプロジェクトもあり前向きに仕事をしていました。

え?転勤?なぜ、ぼくが?

3年目にさしかかる頃、管理部門の他の部署へ勤務地の変更をともなう異動を突然いいわたされたのです。

え?転勤?本社から離れるの?なぜ、ぼくが?

次に異動するときは、入社前に希望していた部門への異動も可能性としてまだ消えてはいないと希望もっていたのですが。。。

あまりにも予想外だったので、頭が真っ白状態になりました。

欧米の会社と日本の会社の採用事情の違い

アメリカをはじめとする欧米の会社の場合は、中途採用はもとより新卒でも入社時点で特定の職種のプロフェッショナルとして採用します。

たとえば新卒の場合、大学でITを専攻したひとは開発エンジニアとして開発部門へ、マーケティングを専攻したひとはマーケティング部門へ、会計や経済を専攻した人はファイナンスのプロフェッショナルとして経理部門へというようにです。

日本ではよくある、例えば大学でマーケティングのゼミ出身で商品企画やセールスマーケティング部門を希望しているにもかかわらず、唐突に人事部門へ配属されるというようなことはまずありません。

もちろん、中途採用の場合は今までの職務経歴での実績が採用の大前提ですので、入社後に畑違いの仕事につくことはまずありません。

欧米のほとんどの企業では、日本のように人事部門が主導となり一括して採用するわけではなく、各部門のマネージャーが自分の欲しいとおもう人材を自分で選んで採用します。

人事部の仕事はそのプロセスの管理だけであり、直属となるマネージャーが主導権を握っているのです。

ここが日本と欧米の企業との採用に関する大きな違いでしょう。

そもそも欧米の場合は、人によって卒業時期も違いますし、インターン制度もさまざまなスタイルがありますので、新卒つまり大学卒業後はじめて正式にどこかの会社にはいる人でも入社の時期や条件は人によってさまざまなのです。

日本のように大学在学中に同じ時期に面接をして入社内定をだし、新入社員は全員一緒に4月1日に全員同じリクルートスタイルで入社式を行うということはありません。

サラリーマンにとって異動、転勤はあたりまえなのか

話をもとにもどします。

Aさんは、この異動の辞令がでた時に、

ああ、会社勤めのサラリーマンをやっていると、おれの人生の進路は、こうやって会社の事情で自分の意思とは関係なく一方的に決められてしまんだなあ。

これがサラリーマンというものなのか。。。

と強く感じだといいます。

自分の進みたい方向を自分の意思で決められないという、このなんともいえない無力感というか寂しさ悲しさは、日本企業で働くサラリーマンなら誰しもが感じたことがあるでしょう。

人事異動で他部門へとか転勤というのは、あたりまえだろ、といってしまえばそうなのですが、入社3年目のAさんにとっては、そうはおもえなかったのです。

欧米の人事異動システムはどうなっているのか

ちなみに、欧米ではこのような唐突な異動、転勤はおこりません。

自分の意思に反しての部門異動というのは、「もうあなたはこの部門には必要ないから」という会社側の意思表示、具体的に言えば、直属マネージャーがもういらないといっているようなものです。

もちろん、特殊事情により部門を異動させることはレアケースとしての例外的にありますが。

要は、プロモーションをともなわない自分の意思に反しての異動は、自主的に辞めさせるための方策である場合が多いのです。

会社としてもリストラするとなると、いろいろとコストや手間がかかるわけで、リストラ前のワンクッションというところです。

単身赴任ってなに?

しなしながら、日本企業では、このAさんのように、会社都合であっちへこっちへ社員の意思とは関係なく異動転勤させます。

現在の勤務地の近くに家を買ったばかり、こどもが地域の小学校にはいったばかりというような個人的な事情はほとんどの場合考慮されません。

そのため、しかたなく単身赴任しているサラリーマンも多いわけです。

これはほんとに日本特有の人事制度かもしれません。

欧米では、特に勤務地を変更する人事異動は特別なことです。

上層部ともなればまた事情が違い国内はもとより国をまたいでの異動はよくあります。

プロモーションによる勤務地の異動もあります。

新たに本社や事業所、工場を他の地域に異動するケースもありますが、うけるうけないは社員の選択です。

日本のように特段の特別事情もなく(少なくとも本人にとっては)、プロモーションもなく突然勤務地の変更はありません。

異動転勤はサラリーマンの宿命なのか

日本企業の場合、とくに大企業の場合は「ローテーション」として、勤務地を変更したり部門を異動させたりという人事異動が突然のようにあります。

ポジティブな理由としては、その社員を有望人材として社内でいろいろな部門や仕事をを経験させ将来的に幹部として育成したいという意図のもとに実施するケース。

ネガティブなケースとしては、辞めさせたい社員を自主的に辞めさせる意図をもっての方策。

例えば家を建てたばかりとか、親の介護のため単身赴任はできない事情とか、奥さんがその地で仕事をしているため一緒には転勤できない事情とか、子どもの学校の事情とかを十分に知った上で行うケースです。

まあ、会社によって、その職場環境によってなどさまざまな事情のもとに人事部やマネジメントできめることですので、すべてがそうだどは一概にはいえませんが。

一流大企業にいれば人生安泰なのか

とにかく、Aさんは、この人事異動を言い渡されたときに、いいようのない脱力感、無力感を感じてしまいました。

懇意にしている先輩や、気のゆるせる同僚、学生時代の友人にも話を聞いてもらいました。

まあ、みんな当事者ではないので、一般的なありきたりのことしかいいません。

「それがサラリーマンというもの。宿命だよ。そんなに悪い異動じゃないようだから気をもち直して頑張るしかないんじゃないか」

「おまえなあ、それは贅沢というもんだよ。おれと違っておまえは有名一流企業で働いていてそこそこ良い給料もらっているんだから。贅沢な悩みだ。おれなら辞めたいなんて全くおもわないけどな。仕事なんてなんでも一緒だよ。楽で楽しくてわくわくして高給なんてあり得ないよ!」

その時につきあっていた彼女にも相談しました。

勤務地が変わる人事なので、当然会いにくくなります。

にもかかわらず、

「業績も良いし将来性もある一流企業を辞めて一体どうするつもり? 希望している部門へ仮に異動になったとしても、本当にやりたい仕事ができるかどうかなんてわからないじゃない。辞めてどうするの?」

その時にAさんは、結婚を考えていた彼女からこういわれたときに、結婚後のさまざまなシーンでの会話を連想してしまい、なんだか息苦しくなったと言います。

親を心配させたくないので、親には一切話をしませんでしたが、辞めるとなると大反対するのはわかりきったことです。

つまり周りは全員大反対でした

現時点では、Aさんは、迷いながらもまだ会社にとどまっています。

同期の連中や大学時代の友だちが、ポロポロと会社を辞めているということを聞くと、自分もこれからどうしようか?という状況にいます。

私は、Aさんの今後に関してキャリアコンサルタントとしていくつかアドバイスしました。

Aさんの気持ちはよく理解できます。

私自信にも若い頃、同じような気持ちになった経験がありますから。

ただ、私の場合は、外資系だったこともあり、自分の意思がとおりやすい環境にあり、希望どおりに部門を異動したり職種までも何度も変更してキャリアパスを築くことができました。

閉塞感と安定をもとめる気持ちと不確実な将来の狭間で

これからの時代は「石の上にも3年」がんばっていれば、平凡かもしれないけど経済的にはまあまあ恵まれた中流のサラリーマン人生をおくれる時代ではないことは、みんな認識しています。

だからこそ、みんな不安で迷い閉塞感や焦燥感にさいなまれているのです。

あの日本一の大企業のトヨタ自動車でさえ、もう終身雇用はできないと公言しているのが今の世の中です。

トヨタが終身雇用できないということは、日本全体の終身雇用システムが崩壊しているといおうことです。

現時点で絶好調でも未来なんてだれにも予測できません。

現時点で安定しても将来的には不確実です。

そういう状況の中で、Aさんは、これから何をどう考えて行動していけばよいのでしょうか?

次回は、具体的な考え方、方策について書いてみたいとおもいます。

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